6.二人が結ばれしまった夜

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 まあ大体こうなるだろうと、この企みを決めた時から予測していたニーナは、しっかりとリーゼお気に入りのもふもふ部屋着を片手に、扉の前にスタンバイしていた。  なので。 「来た」  とニーナが言った瞬間、勢いよく扉が開き、スッポンポンの主人が飛び出してきた。  まさかここまで予想通りだとは。  自分の未来予測能力の賜物なのか、単にこの変態令嬢のぶっ飛び行動に慣れすぎただけなのか。ニーナは自分の有能さにうっとりしながら 「はい確保ー」  と、暴走列車をしっかり捕まえ、ささっともこもこを着せて露出事故を一瞬で防いだ。 「に、ニーナ!私、私!」  リーゼはニーナの胸に顔を埋めて、えぐえぐと泣き出した。 「はいはい、話は後でしっかり聞きますから」 「どうしましょう私……!!」 「落ち着いてくださいませ」  そうニーナが宥めたタイミングで、ニーナは主人を泣かせた(厳密にはちょい違う)原因が扉の側に立っていたのに気づいたので、視線だけで「余計なことを言うな」と合図をした。相手のチンアナゴ(とはちょっと違うとニーナは思っているが)はこくりと頷いた。 「ニーナ!早く家に……家に帰らなくては……」 「何をそんなに慌てているのです」 「だって、私が……」 「はい」 「推しが結ばれるという世紀の瞬間を邪魔したとか!!処刑ものの失態をしてしまったわ!!」  ニーナは、さすがリーゼだなと吹きそうになったが、すでに地獄の奥底に叩きつけられたようなチンアナゴを見て、冷静さを取り戻した。 「その件については、とりあえず私の方でちゃんと処理しますから」 「本当に!?」  どう処理する気だ、と訴えるような視線をチンアナゴは送ってきたが「良いから黙っとけ」と言いたげな視線をニーナは送り返してから 「1度お家に帰りましょうか。色々作戦会議もしなくてはいけないですし」  その作戦会議の中には、誰の、何のためのと言う内容はあえて入れないニーナだったが、リーゼは 「エドアレ派に知られたら……私……もう薄い本作らせてもらえないかもしれない……」  とぶつぶつ言いながらニーナに従った。  ちなみに、ニーナはというと、リーゼの肩を抱きながら寝室前から去る時にチラリと、呆然と立ち尽くすチンアナゴを見てこう思った。  ちょっとだけ意趣返しはできたけれど、流石にやりすぎたかしら、と。  エドヴィン王子は期待満々で眼鏡を取り替えたものの、リーゼがどれほどエドアレを全力推ししていたかをニーナは数年、嫌と言うほど見続けてきた。  見事に、ニーナが「まあこうなるだろうな」と思った通りの結果になったのだった……。  ちょっとだけスカッとした。  だから、もうニーナからチンアナゴへの意地悪はこれで終わり。  ここから先は、自らの不労所得と、可愛い可愛い主人&主人候補のために動いてやろうかと、次の作戦をニーナは考え始めたのだった。 「リーゼ様、今日からお腹は冷やさないでくださいね」 「え、どうして」 「女に、お腹の冷えは大敵ですからね」
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