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リーゼはどういうわけか、生まれつきド近眼だった。
そのため、裸眼でいた幼児の頃は、とにかくよく転んだ。
末っ子娘のリーゼを溺愛する両親と兄達は、怪我をしてほしくない一心で、とても高級品である眼鏡をリーゼに買い与えた。
するとリーゼは、今まではぼんやりとしか見えなかった反動だろうか。
「ねえ、あの美しい空は何?」
「このお花の形、とっても素敵ね」
目に映るもの全てに、リーゼは興味を示した。
その中でも「色が鮮やか」で「形が可愛らしい」とリーゼが考えたものは、数時間でも見続けることができた。
それだけなら、「美しいものが好きな、可愛らしい令嬢」の肩書きくらいでせいぜい済んだだろう。
実際、両親や兄たちが与える、彼らが考える「美しいもの」に触れるたびに
「お父様、お母様、お兄様、素敵なものありがとう。大好き」
にこやかにリーゼが微笑み、お人形のようなリーゼのその姿にキュンっとなる家族の図は、周囲から見ても微笑ましかった。
だが、リーゼの「美しいもの好き」は、知識を得れば得るほどヒートアップしていくことになる。
さらに言えば、「萌え」「推し」「カップリング」の暴走が始まるきっかけになってしまったのが、まさにリーゼがエドヴィン王子とアレクサンドラの姿を初めて見た日。
それは、リーゼが14歳の時に参加した、初めての舞踏会でもあった……。
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