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スタジオを出て、4人でラーメンでも食いに行くかと駅中を歩く。
都会に出てきて思ったが、この土地の人たちは、どんな時間になっても必ず誰かしらが精力的に活動していて、休むことを知らない。
今もとある団体が、駅の端っこで目立たないように、旗を立てて居座っている。無論そんなものに興味は無いから、いつも通り過ぎ去ろうとしたけれど、無意識に何かを感じ取ったのか、今日は一人の青年へと、視線が向いていた。自然と、足も歩みを止める。
「どうした? 人志」
隣で秀太も歩みを止め、それに合わせ皆その場で立ち止まる。俺は「いや……」と断ろうとしたが、すぐに秀太も違和感に気付いたのか、団体の方へと目を向ける。
「なあ、あれってもしかして隆一?」
直也も青年の方へ目を向け、「まじだ」と声を出す。
「噂をすればってあるもんだな。あいつ、こんなとこで何してんだ?」
直也の言葉に合わせ、俺は団体が掲げる旗に目を向ける。なんかのNPO法人らしいが、団体名からはよく分からないな……。
「あっ」
秀太の声で視線を戻すと、俺たちに気付いたのか、彼は背を向けて走り出していた。
「なんで逃げんだよー。やましい活動なわけでもないだろうに」
呑気な秀太とは打って変わって、俺は迷わず声に出していた。
「追いかけよう」
「はあ? ガチで言ってる?」
「お前ら知りたくないのかよ、なんで隆一がバンド抜けたのか。俺は未だに腑に落ちてないんだ、本人に直接聞くしかない」
「そうは言ってもよ、あの団体にいるってことは、絶対なんか訳ありだぜ。あんま追及すんのも良くないんじゃ――」
「いや、俺も人志に同意だな」
秀太の言葉を遮り、直也もはっきり告げる。
「別にバンドをもう一回やろうって言ってるわけじゃねえんだ。俺たちにはもう勝がいるしな。ただ訳を聞くだけだ。そんないけないことでもねえだろ」
そう言うと、直也は勝に、肩に抱えていたベースを押し付ける。
「すまねえが、これ持っといてくれ」
「はあ!?」
流れ弾をくらい、勝は面食らっているが、俺も遠慮なしにギターのハードケースを彼に押し付ける。
「まったく……わりいな勝、ラーメン屋探しといてくれ!」
秀太までそんなことを言い、返事も聞かず、3人で隆一の後を追いかける。勝は後ろで「おーい!!」と不満げに声を出していたが、やがて諦めたのか、その声も聞こえなくなった。
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