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一週間後、俺たちは予定通り、ライブハウスでライブを行った。
4人で演奏する、隆一が残してくれた曲。勝も完全にものにして、彼らしくそれを叩きあげてみせた。そんなライブ会場の奥で、隆一は俺たちを見ていた。
彼は、静かに泣いていた。
「今日、誘ってくれてありがとう。最高のライブだったよ」
合流した後開口一番に、隆一はそう言ってくれた。
「やっぱり俺、お前らが作る曲が大好きだし、秀太の歌が大好きだって改めて思った。それなのに、この前はあんなこと言って、ごめん。本当馬鹿だった」
「そんなことねえよ。俺だって、お前の事情も知らずに、勝手にいろいろと言っちまった。俺の方こそ、ごめん」
「何言ってんだ、あれでこそお前だよ。確かにムカついたけど、あんなことを堂々と言えるお前は、やっぱりかっこいい。正論って、心の中で思っても、なかなか口にできるもんじゃないだろ」
そこで隆一は、寂しそうな表情を見せて少し俯いた。
「いい腕のドラムを見つけたみたいだし、お前らはこれからもうまくやっていくんだろうな。俺は、まだまだこれからだ」
「……やっぱり、いろいろと大変なのか?」
秀太が聞くと、隆一はこくりと頷く。
「一応働かせてはもらってるけど、安月給だし、母ちゃんも養わなきゃいけないし、苦労はしてるよ。でもまあ、暇があったら、お前らのライブ、これからも来させてもらうよ。あんなこと言ったのに、俺のことを見捨てないでくれたこと、嬉しかったし、やっぱり俺、音楽好きだからさ」
俺たちはその言葉に、晴れやかに笑うことはできなかった。隆一の抱える問題は、やはり簡単に解決できるものじゃない。それは理解したはずなのに、彼が望む人生を選択できないこと、それを手助けしてやれないことに、不甲斐なさを感じずにはいられなかった。
そんな俺たちを、少し後ろから勝は観ていた。けれど、やがて決心したように一歩前へと歩み出た。
「あの、隆一さん。よかったらうちで、バンドスタッフやってくれませんか」
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