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少女は、赤い下敷きを透し、染まった世界を眺めてた。
少女は、夜明けに向かって歩いている。燦々と散るように煌めく凸凹な地平線は、温い。
街灯はまだ消えていない。夜の縁に、目をしぼめて、欠伸をひとつ。
「なぁ」
僕は、後ろから声をかける。白い吐息はしんまりと消え、冷淡な空気を纏う君を振り返らせる。
「なぁに?」
冬に似合わない微笑み。路面に反射する、二人の長い影。
「今日、寒くない?」
「別にぃ」
彼女は、朝日に潰れてしまいそう。日の光に彼女の鮮明化した髪の毛が、金に光輝く。
「ねぇ、今私ってどんな顔してる?」
「どんなって、どんな?」
僕は彼女の血液型を知らない。
誕生日も、好きなものも、好きな音楽も、好きな、好きな?
彼女は、傷ついているだろうか。
知ろうとしなかった僕は、彼女を傷つけたか。
別に知っていたとして、プレゼントしたり彼女の好きなことに興味を持ったりという事は無い。
ただ、彼女について、まだ未知の部分があることが麗しかった。
そう思えるのは、何故?
事実として我々を繋げているのは、遠い過去だけだ。
くしゃみをしたら、吹き飛んで、死んでしまいそうなほど、霞がかかっている、遠い過去。
夜露は、夜に滴る雨粒は、誰かの目覚める声で消えた。
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