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私が目を大きく開けてその光景を見る中──万亀はまるでゴミ袋をゴミ置きに放り出した後みたいにパンパン、と手を払ってふぅ、と一つ息をつく。
そうしてこっちに軽く振り返って、何事もなかったかの様にニコッと爽やかな笑顔を見せた。
「──さ、行こう。
一限目は数学だよね」
言いながら私の背にさり気なく手を置いて優しく押し出す様にして北ノ条の脇を通り抜けようとする。
「〜って、うおおい、こら!ちょっと待て!
こないだから君は一体何なんだ!?
事あるごとに俺とルイちゃんとの間をジャマしてきて!」
と、つんのめってしまった体勢をすぐに立て直し、大憤慨する北ノ条だったけど。
万亀はそれをもう見事なまでに完全に無視して、
「そういえば昨日の授業で分からない所があったんだ、後で教えてくれる?」
私の方へ爽やか笑顔を向け、言ってくる。
けど、それで大人しく引き下がる北ノ条じゃあなかった。
北ノ条は万亀の腕をむんずと掴み「待ちたまえ!」と怒りの声を上げる。
万亀が──珍しく眉をしかめて面倒くさそうな顔をするのを、私ははっきりとこの目で見た。
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