8. 波乱

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山野葵は何故か不服そうに腕を組み、私に言ってくる。 「さっきから私一人ではしゃいでて、バカみたいじゃない。 あんたこのリムジン乗ってて、なんっとも思わない訳?」 言ってくる。 だってもう何回か乗せてもらってるし……なんて事、もちろん言える訳がない。 まぁ、それがなくても私の反応は山野葵やうちの父と比べればかなり薄い方だと思うけど。 ともあれ私は 「ええっと……」 ととりあえず何らかの言葉を探して、 「あ、あんまりすごいから、びっくりしちゃって」 と誤魔化しの言葉でやり過ごす事にした。 山野葵は初めはやや疑いの目で私を見てきていたけど。 結局は「ふーん、あっそ」という一言に収まった。 どうやら深く疑われたりはしなかったみたい。 ほんと、何よりだわ。 思いつつ……私は今のこの機会に、とある疑問を口にする。 「あの……一つ聞いてもいい? 今朝山野さんが言ってた『監視』ってさ……? 私に一日中張り付いておくって事なの? 張り付くっていうか、引っ張り回すっていうか」 言い方が失礼になっちゃうのを承知で問いかけると、山野葵が堂々とした様子で「そーよ」と返してくる。
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