8. 波乱

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ほんのちょっと体が進行方向に持っていかれる様な、それくらいのブレーキだ。 だからそうドキッとした訳でもないんだけど。 ~えっ? 猪熊さんで珍しい……! 思わず目を瞬き、思っている──と。 運転席の方から猪熊さんがこちらの無事を確認して、 「失礼致しました」 そう、謝る。 そうしてやや困った様な表情で私に告げてくる。 「有馬様……。 古谷高校の北ノ条様が……。 いかが致しますか?」 困った様に、問いかけてくる。 ~へ? 北ノ条?? 私は思わず訝しみながら席を移動して猪熊さんの更に前方──フロントガラスの向こう側の様子を見る。 するとリムジンの真ん中に両手を広げて『止まれ』の姿勢で立つ北ノ条の姿が──……。 「……このままムシして行っちゃいましょう」 思わず北ノ条を目にして思った事をそのまま口にしてしまう。 ~だって絶対対応なんかしたらめんどくさい事になるじゃない。 ていうか何あの人。 何でリムジンの前にいきなり飛び出して(猪熊さんのさっきのブレーキはそういう事でしょ?)来てんのよ?
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