42人が本棚に入れています
本棚に追加
ほんのちょっと体が進行方向に持っていかれる様な、それくらいのブレーキだ。
だからそうドキッとした訳でもないんだけど。
~えっ?
猪熊さんで珍しい……!
思わず目を瞬き、思っている──と。
運転席の方から猪熊さんがこちらの無事を確認して、
「失礼致しました」
そう、謝る。
そうしてやや困った様な表情で私に告げてくる。
「有馬様……。
古谷高校の北ノ条様が……。
いかが致しますか?」
困った様に、問いかけてくる。
~へ?
北ノ条??
私は思わず訝しみながら席を移動して猪熊さんの更に前方──フロントガラスの向こう側の様子を見る。
するとリムジンの真ん中に両手を広げて『止まれ』の姿勢で立つ北ノ条の姿が──……。
「……このままムシして行っちゃいましょう」
思わず北ノ条を目にして思った事をそのまま口にしてしまう。
~だって絶対対応なんかしたらめんどくさい事になるじゃない。
ていうか何あの人。
何でリムジンの前にいきなり飛び出して(猪熊さんのさっきのブレーキはそういう事でしょ?)来てんのよ?
最初のコメントを投稿しよう!