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私にとっても、もちろん猪熊さんにとってもメーワク極まりないじゃないの。
そんな気持ちで思わず口をついて出てしまった言葉だったけど、あんなに道の真ん中を塞がれてちゃ『このままムシして行っちゃう』事なんて出来る訳ないわよね。
も~、一体何なのよ!
これが万亀ん家のリムジンだって分かっててやってるの?
それとも車と見ればとりあえずその前に飛び出す危ない趣味でも持ってんの?
どちらにしても……。
こんな事で猪熊さんの手を煩わせるなんて、絶対ダメ。
そう思い直して、私は ちょっと話してきますと口を開きかけたんだけど。
「なに、あいつ。
古谷の北ノ条って、こないだあんたに迫ってたあいつの事?」
横から山野葵がなんだかやっぱり迷惑そうに尋ねてくる。
「え?ああ、うん?」
「すみません、窓開けてもらってもいいですか?」
とこちらは猪熊さんへ向けて。
猪熊さんが「かしこまりました」といかにも執事らしい返事で返してくれて、そうして山野葵のいる方の窓がウィーンと静かな音で開く。
と、その気配(?)を察知したのか、北ノ条が開いた窓の方までやって来た。
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