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その苦笑は、万亀がここで待ってるって知ってての苦笑なのか、それとも『そこで待ってたんだ』っていう呆れの苦笑なのか。
「二人とも仲がいいんだね。
一緒に登校?」
「う、うん!
私達、すごく気が合っちゃって。
家もおんなじ方向だし。
ね?瑠衣ちゃん?」
とはもちろん、山野葵。
う〜ん、『すごく気が合っちゃった』かどうかはさて置いて。
山野葵はまぁ、そこまで悪い子じゃなさそうだし、むしろかわいいなぁと思ったりもしてたし。
それに家がおんなじ方向だったっていうのも、これはもちろんウソじゃあない。
だから──私はにこっと笑ってそれに返しておく。
「うん、まぁそうなのよね」
言うと万亀が私の顔を見て「そっか」と返す。
それはほんの一瞬の事、だったんだけど。
その温かな微笑みに、一瞬とくん、と心臓が動く。
「ところで俺も一緒に行ってもいいかな?
せっかくここで会ったんだし」
にっこりと爽やかな微笑みに、もちろん山野葵が断る理由なんてない。
むしろ思いっきりのぼせ上がって「もちろん!」と元気に返す。
万亀が「ありがとう」と山野葵に微笑むけど。
私は自分で、自分の事に戸惑った。
とくん?
とくんって、何?
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