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「ちょっと、待っ──……」
ララが言い終わるより早く、カラスが空いているほうの手を振りあげ、指先から青白い電光がほとばしった。
一瞬のことだったので、知らない人が見ていたら、なにが起きたのかわからなかっただろう。
次の瞬間には、カラスの魔法のせいで、まわりにいた男たちは全員気絶して倒れていた。
突然の出来事に、場の空気は凍りついた。静まり返ったまま誰も動こうとしない。気絶ではなく、殺したと思われたかもしれない。みな、倒れた男たちの真ん中に立っているカラスとララに注目している。
カラスは苦みばしった顔をしたまま、倒れている男を踏み越えて、なんの説明もなしに出ていってしまった。
誰かが小声で「チタニア人か……」とつぶやくのが聞こえた。チタニアなまりはないが、ララもチタニア人だ。
「あの。ただ、気絶してるだけだから……」
ララは自分まで白い目で見られてしまい、いたたまれなくなった。
倒れているのを踏まないようにまたぐと、おとなしくカラスにつづいて店を出た。
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