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世界に虹がある理由
これは、私が幼稚園の先生をやっていた頃のこと。
けして規模の大きい幼稚園ではなかったのだが、当時新米だった私は色々なタイプの子供達に手を焼いててんてこまいだった。小学校の先生も先生で大変なことはたくさんあるだろうが、幼稚園には“やっと言葉が通じるレベルの子”から“ちょっと賢くなってきたのを悪い方向に使おうとする子”まで様々な問題児がいるのである。
優等生と呼んで差支えの無い子もいるが、まあ基本は毎日戦争だ。
『たくみ君!その木に登っちゃ駄目だって言ったでしょ!!』
『なんで?先生なんで?』
『うわあああああああああああああああああああああああん!カナコちゃんがぶったあああああああああああああああああああああああああああ!!』
『先にぶったのセナちゃんの方じゃん!カナコ悪くないもん、悪くないもんんんんんん!!』
『ああ、喧嘩しないで。お友達を叩くのはどっちも駄目でしょう?』
『びえええええええええええええええええええええん痛い、痛いよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!』
『大丈夫大丈夫、ちょっと転んですりむいただけだからねえ』
『せんせえ、アキちゃんがうんち漏らしてる……』
『やーいうんこ女!うんこ女!』
『せんせー。ソラくんがいませーん』
『先生先生先生!タクヤが屋根の上に登ってるんだけど!なんで、あいつは屋根の上に登ってるのに、おれは木の上に登ったらダメなんだよ!』
『どどどどどどっちもだめだから!降りて降りて降りて降りてえええええ!』
『先生、トイレにはんかち落としたらつまっちゃった……なんかいっぱいお水あふれてくる……』
『ちょっとおおおおおお!?』
多分、私の要領が悪かったというのもある。あるにはあるのだろうが。
毎日発生する、予想しようもないトラブルの数々に、辟易させられることもしばしばだったのだ。無論、子供達の中には優しい子も多いし、やりがいのある仕事だと感じることも少なくないのだけれど。
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