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出逢い〜♀編〜
それは、ある日突然やってきた。
「未来、お母さん、再婚しようと思ってるの」
母に恋人がいるのは知っていた。
私が小さい頃に、父親が不慮の事故に遭い、私と母を残してこの世を去った。
それからというもの、母は女手一つで私をここまで育ててくれた。
「綾瀬さんなら幸せにしてくれると思うよ」
そんな母をずっと支えてくれた母の恋人である綾瀬さんは、私も何度か会っていて、人柄の良さはパーフェクトだった。
「未来がそう言ってくれるとお母さんも嬉しいわ」
幸せそうに微笑む母の顔を見ていると、私も自然と笑みが溢れた。
いつもどんな時も、私の味方で居てくれた母だから、私も母の一番の味方でいたいと思った。
「再婚する前に、未来に会ってほしい人がいるの」
母は、少しバツが悪そうに俯きながら言った。
「会ってほしい人?綾瀬さんじゃなくて?」
「綾瀬さんは綾瀬さんなんだけど…」
変な間が私を不安にさせた。
「綾瀬さん、実は息子さんがいるのよ」
「息子?」
私は勝手に『小学生ぐらいの子供』だと思い込んだ。
「いいよ、会うよ!」
私は、そう深くは考えずにあっさり受け入れ、
そんな私の返事に、母も手を叩いて喜んだ。
__約束の日。
予め綾瀬さんが予約していたホテルのレストランで、再婚に向けての挨拶と、話し合いが行われることになっていた。
私と母はホテルのレストランでの会食ということで、二人で張り切っておめかしをする。
身支度をしながら、私は母に、気になる事を質問した。
「そう言えば綾瀬さんの息子さんってお母さんは会ったことあるの?」
母から綾瀬さんの息子の存在を聞いた日から、会う約束の日になるまで、その話しに触れることはなかった。
「あるわよ。すごくいい息子さんでね、きっと未来ともすぐに仲良くなれるわよ」
「…そっか…!」
母の幸せそうな顔を見ていると、聞きたい事は山ほどあるのに、なかなか聞き出せずにいた……。
約束の時間になり、私と母はホテルのレストランのドアをくぐった。
レストランの一番奥の、夜景が一望できる窓際の席に案内される私と母。
遠目で、見覚えのある綾瀬さんの姿が見えてくる。母と綾瀬さんも、お互いの姿に気づき、お互いが小さく手を振り確認し合った。
席に近づくに連れ、綾瀬さんの隣に座る息子らしき人の存在が私の胸をザワつかせる。
「綾瀬さん、理玖くん、お待たせしました」
「やぁ、美和さん、未来ちゃん、よく来てくれたね、さぁ、座って」
母と綾瀬さんが挨拶をし合って席につく。
「未来…?どうしたの?早く座りなさい?」
私は、綾瀬さんの言葉も、母の言葉も耳には入らず、ただ呆然と立ち尽くす。
「綾瀬さんの息子さんって…」
「あ、あぁ…私の息子の理玖だ。宜しくね。」
綾瀬さんが和やかに答える。
「小学生じゃなかったんだ…」
ボソッとそう呟く私に
「小学生…?そんなこと一言も言ってないじゃない」
母が笑いながら正論で私に言った。
聞いてない……。
いや、聞かなかった私が悪いのだけれど。
『綾瀬さんの息子さん』はどっからどう見ても大人の男だったのだ。
「早く座ってよ、未来」
初めて会った時から馴れ馴れしく、低い声で私の名前を呼んだ。
「あ、はい…宜しくお願いします…」
慌てて思わず敬語で挨拶する私。
恐る恐る見るその再婚相手の息子の姿は、
座っていてもわかる背の高さ、目は大きく切れ長で、鼻は筋がはっきり見えるほど高く、髪はナチュラルなブラウンカラーで少し緩やかなパーマで無造作にセットされている。
正に、モデルのように容姿端麗な男の姿を目の前に、私が戸惑い、慌てるのも無理はない__。
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