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出逢い〜♂編〜
それは突然、親父からの言葉で始まった。
「理玖、お父さんは美和さんと再婚することを決めたんだ」
薄々そうなることは気づいてはいた。
オレの本当の母親は、オレがまだ小さい頃に、外で男を作って出ていった。オレと親父はあっさりと捨てられた。
親父は不器用なりにも、必死にオレの事を育ててくれた、だから…
「親父が決めたなら、オレは賛成だよ」
親父の再婚相手に決めた美和さんは、オレも何度か会ったことがある。
母親の温もりを知らずに育ったオレは、美和さんの優しさが心地よかった。
「今度、お互いの家族で、挨拶がてらに会食をすることになった。理玖も来てくれよ」
「おう、もちろん行く。…あの子も来るんだろ?」
「未来ちゃんのことか?それならもちろん来てくれるぞ」
未来の存在は、美和さんと親父とオレ三人で、何度か会って話してる内に教えてもらった。
「これが私の娘の未来よ」
嬉しそうにケータイの画面を見せてくる美和さん。
はっきり言って興味は然程はなかったけど…
ケータイの画面に映し出された無邪気に笑う未来の顔が、あまりにもかわいすぎて、言葉が出なかった事を今でも覚えている。
__約束の日。
オレはこの日が来るのが待ち遠しかった。
親父と美和さんの挨拶なんかより、初めて未来と会えることの方がオレにとっては重要だった。
オレと親父がホテルのレストランに到着して、しばらくすると、レストランの入口に二人の女性の姿が見えた。
「アレじゃね?」
「あ、あぁ本当だ、来たみたいだな」
そう言って親父は小さく手を振った。
それに気づいた美和さんも手を振りながら近づいてきた。
でもオレは、そんな美和さんより、隣を歩く未来の方が気になって仕方がない。
「綾瀬さん、理玖くん、お待たせしました」
照れくさそうに、笑いながら挨拶をする美和さんの後ろに、隠れるかのように未来は立っていた。
「やぁ、美和さん、未来ちゃん、よく来てくれたね、さぁ、座って」
親父が一声かけるも、座ったのは美和さんだけだった。
「未来…?どうしたの?早く座りなさい?」
美和さんにそう促されるも、未来は突っ立ったままだ。
「綾瀬さんの息子さんって…」
未来は、言いにくそうにオレを見て言った。
「あ、あぁ…私の息子の理玖だ。宜しくね。」
オレより先に、親父が答えた。
すると未来は、
「小学生じゃなかったんだ…」
そう小さく呟いた。
小学生?オレのことか?みくはオレのことなにも聞かされていなかったのか…?
「小学生…?そんなこと一言も言ってないじゃない」
美和さんは笑いながら未来に向かって言った。
オレは正直『ちゃんと言っててやれよ』って思った。だけど口に出して言うのはやめた。
俯いたままずっと立ってる未来が可哀想になったオレは、
「早く座ってよ、未来」
できるだけの笑顔でそう催促した。
すると未来は何を勘違いしたのか、
「あ、はい…宜しくお願いします…」
まさかの敬語でオレに挨拶をしてきた。
小さな手をギュッと握りしめて、顔を真っ赤に赤らめる。
そんな未来の、焦る姿がかわいくて、
恥ずかしそうに俯く姿も、正にオレの理想だった。
チラチラとオレを見る初々しい感じが、またたまらなく、愛おしく感じた。
未来の全てがオレの理想そのもので、
オレは、初めて会えた嬉しい気持ちより、自分を自制できるのか、不安になった__。
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