同居開始〜♀編〜

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同居開始〜♀編〜

 両家で挨拶を交わしてから、恐ろしいほどあっという間に話しは進み、母と綾瀬さんは入籍を機に、新しい戸建ての家を買った。  学校が冬休みに入ったタイミングで、新居に引っ越すことになった。  綾瀬さんの気遣いで、私は学校を転校せずに済んだ。だけど、理玖は学区が変わるため、転校を余儀なくされた。 __引っ越し当日。  私と理玖に割り振られた部屋は、三階の隣同士の部屋だった。 「理玖、未来ちゃんの重い荷物は手伝ってあげなさい」 綾瀬さんが理玖に、向かってそう言うと 「それ、重いの?」  そう言いながら、理玖は私の顔をのぞき込むかのように近づいてきた。  理玖の顔を直視できない私は焦りを隠せず、無言でぶんぶんと顔を横に降った。 「いいから、かして」  理玖は笑いながら、私から荷物を取り上げて三階へと上がって行った。 「未来ー、これどこに置くー?」  三階から呼ぶ理玖の声で、慌てて私も三階の自分の部屋へと入った。 「ここへ…お願いします…」 「りょーかいっ!」  自分の部屋に『男の人』がいる。 そんなことは初めてだったから、目の前にある光景がまだ信じられなかった。  荷物の片付けが終わり、理玖から大きなため息が(こぼ)れた。 「自分の荷物もあるのに…ごめんなさい」 「いいよ、オレ、男だし。でも疲れたー」  そう言いながら理玖は私のベッドに項垂(うなだ)れるかのように寝そべった。 「このベッド、未来の匂いがする」  理玖は突然、ポツリと呟いた。 「わ、私の匂い…!?」 「そう、未来の匂い」  ニヤニヤしながらそう言う理玖に、冗談なのかなんなのかわからなくなった私は、部屋から逃げ出そうとした。  だけど理玖はベッドから勢いよく起き上がり、私の腕を引っ張って自分の方へと抱き寄せてきたのだ。 「…キャッ…!」 「…ぉっと…!」  一瞬の出来事に何が起こったのかわからなかった。 「未来って小っせーよなー」  理玖の言う通り、私の体はすっぽり理玖の体に覆われた。 「……離してよっ…!」  理玖の体は、力を入れてもビクともしない。  それでも嫌がり離れようとする私の体を、今度はベッドへと押し倒してきた。  理玖は私の上に覆いかぶさり、私の両手は、力強い理玖の手でベッドへと押し付けられ、両手の自由をあっさりと奪われた。  天井が見えなくなるほど近い理玖の顔で、私の視界はいっぱいだった。 「知ってた?男って、嫌がれば嫌がるほど興奮する生き物だってこと」  理玖の、余裕に浮かべる笑みが怖かった。  だけれど…  理玖の唇が私の唇に触れるか触れないかのギリギリのところで、理玖の漏れ出る息遣いを感じて を期待している自分が……  何より一番怖かった__。
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