はじまり、はじまり

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はじまり、はじまり

「おお!そなたが《中けんじゃ》たかゆきじゃな!よく来た!」  白髭をたくわえた王様が赤いマントに杖を突き、謁見の間の立派な椅子から立ち上がった。 「王様、私が呼び出された理由はなんでしょうか」  たかゆきは恐縮していた。自分がなぜ王様に呼び出されたのかがわからない。なにか悪さをしたわけでもなければ、褒められる事をした覚えもなかった。 「たかゆきよ、単刀直入に言おう。いまこの《ワールド》は未曽有の危機に晒されておる」 「未曽有の危機?」 「さよう。この《ワールド》のしくみをおぬしにコソッと教えてやろう。この《ワールド》、実はまだ生まれたてホヤホヤ、ベイビーなのじゃ!」 「この世界が生まれたてホヤホヤ? ご冗談を。私たちはこうして昔っから存在しているじゃありませんか!」 「いきなりズバリ、核心を教えてやろう!それはこの《ワールド》の《設定》じゃ!この《ワールド》はな、次元を隔てた異世界の住人である『読者』なる人々の関心の多寡によって存続できるかが決まる!例えば魔王に攻められて滅びるのなら、わしらがいなくなるだけで《ワールド》は存続する。命もまた芽生えるじゃろう。しかし読者の関心がこの《ワールド》に向いていないと、わしらどころかあらゆるもの、この《ワールド》そのものがいつのまにか消滅しちゃうのじゃ!関心を集められないと、ある日突然無になっちゃうんじゃ、なかなかエグイ設定じゃろ!現によそのワールドは、こうしている最中にもひとつ、ふたつと消滅しておる!」
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