はじまり、はじまり

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「つまり生まれたてホヤホヤ、だから異世界の住人の関心が薄くて危ない、そういうわけですね」  私にはにわかには信じがたいですけど、とたかゆきは付け足した。 「さすが《中けんじゃ》じゃ、察しがよいの。要するに、異世界の住人、つまり読者の関心は神の恩寵なのじゃ。わしらに命があるのも、太陽が輝くのも、喜びや悲しみがあるのもこの《ワールド》を気にしてくれる読者のおかげ。気にかけてもらえなくなっちゃうと、それらがいきなりぜーんぶなくなっちゃうんじゃ!嫌じゃろ!そんな訳で読者に気にかけてもらえるよう、必死こいて冒険をする必要があるワケじゃ!」 「そんな!だれかこの《ワールド》を宣伝してくれるような人はいないんですか?」  王様は言った。 「わしだって異世界にインフルエンサー雇いたいわい!それが叶わないから大変なんじゃ!」 「じゃあ逆にですよ、関心がたくさんあつまるとどうなるんですか?」 「良い質問じゃ。関心を集めれば集めるほど《ワールド》は豊かになる。一言でいえば拡大する!新たな町や山、海が現れるようになるじゃろう。冒険できる世界が広がるワケじゃ。町が増えれば活気に満ち、冒険できる場所は増え、《ワールド》はより豊かに、関心を集めやすくなるじゃろう!」  王様が後ろを振り返って重々しく頷くと、謁見の間の奥から2mもの大男がヌッと姿を現した。筋骨隆々、丸太のように太い腕を持ち、胸板は分厚い。太い眉毛にガッシリした顎を持っていた。 「こやつがおぬしと冒険を共にする《勇者ひでぷみ》じゃ。どうじゃ、いかにも勇者という見た目をしておるじゃろ。して、王様調べによると、なにやら読者のあいだでは『異世界から召喚したキャラにチート属性を乗っける』のが流行っとるらしい!」 「チート、というのがよく分かりませんが、じゃあこのひでぷみさんはそれに該当すると」
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