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生首の目線がこちらの目線と交わる。
「すぐできることだ。わしは首だけになったが、最後に身体があった場所まで連れて行って欲しいのだよ。わしの妻も子供たちも一緒の場所で殺された。あの世にも行けずに彷徨っているようだから、わしがあの世への手引きをしたいのだよ」
「子供? 子供も一緒に殺されたの? いくつの子?」
「七つの息子と四つの娘だ」
「酷い! そんな小さな子を!」
生首はじっと私の目を見て諭すように語る。
「お嬢さん、お嬢さんは今の世の人だから知らぬかも知れぬが戦国では当たり前のことなのだよ。一族全て根絶やしにするのは。それはわしも家族も理解していることだ。ただ怒ってくれてありがとう」
生首は心なしか頭を下げたように見えた。
「分かった。聞いてあげる。でも、あなた飛んでいけないの? 私聞いたことあるけど、戦国武将の生首が飛んだ話」
「あれは普通の話ではないから。大体普通に手足ない生首が移動できる訳ないじゃん。でなきゃ何百年も通りすがった人に声かけてないもん!」
脱力する。この生首、なんか緩い。
「分かった分かった。ところであんた名前なんて言うの?」
「吉崎四郎一右衛門と申す」
「そうかぁ。呼びづらいから生首さんでいいね?」
「それ聞いた意味ないじゃん。いいけどさ。お嬢さんは?」
「私? 私は志乃。でもお嬢さんでいいよ。お嬢さんだもん」
「なかなか肝が据わってるな……」
「お嬢さんは言ったもの勝ちだから」
私は生首さんに手を伸ばす。ちゃんと触れる。どうやって持って行こうかと思ったが肩に乗せることにした。
「……生首を肩に乗せるお嬢さんって生まれ変わっても見る気ない気する……」
「捨てるぞ!? 生首が細かいこと気にするな!」
「すいません……」
この生首さん、かなり気が弱いのか一族が滅んだのが分かる気がする。
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