君がいい、どうしても

お願いなんてしなくていい

「広尾……？」
「日高、触りたい」

　瞳が孕む熱は濃くなり、俺だけに向けられる。その瞳を見ただけで、すべてが飲み込まれてしまいそうだった。
　体中熱くした俺が小さく頷くと、シャツの中に手が侵入してくる。鎖骨下まで捲りあげられた。

「日高……」

　広尾の手が、視線が、脇腹、胸を撫でていく。恥ずかしすぎて俺は視線をあちこちに泳がせた。

「ん」
「かわいい」

　ゆっくり胸を撫で付けた手が突起を弾く。思わずもれてしまった声に恥ずかしがる間もなく、指先がくにくにと押し込んだ。

「あっ、……はずかし」
「いいよ、もっと恥ずかしいとこ見せてよ」
「っん」

　弾かれ、押し込まれ、つままれ、執拗に突起を弄られる。くすぐったいようなムズムズする感覚に息を吐いていると、近づいてくる顔。左の手がどけられ、代わりに唇がそれを食んだ。

「っ、ん」

　広尾が俺の胸を吸っている。ちゅうちゅうともれる音がいやらしい。恋人に胸を吸われるのも自分の声もすべてが恥ずかしくて顔を覆いたかった。

「あっ、あっ」

　唇の間から赤い舌が垂れ、舐めてはつつかれる。唾液でてろてろと光る胸が生々しかった。

「ん……っ！　ひ、広尾」
「気持ちいい？」

　右胸を弄っていた手がいつの間にか移動し、さわさわと腰の中心を撫でる。服の上からでも広尾の手に触られると体中の熱がそこに集まった。

「服、脱がせちゃっていい？」
「……うん」

　広尾は手際良くベルトを外し、服をずらす。本当に今日このまま、広尾と。部屋に来ることになったからには少し期待もしていたけど、いざとなるとどうして良いかわからない。
　けれどこの時間を止めたくはなくて、俺は広尾の手に促されるまま腰を浮かし、脱がされていく服を見ていた。シャツも抜きとられ、纏っているのは下着だけになる。明らかに中心が膨らんでいるのがわかり、また顔が熱くなった。

「良かった、気持ち良くなってくれて」
「っ、あっ」

　下着の上から撫でつけられ、肩が震える。指先が形をなぞったかと思うと、下着に引っかかりずらしていった。ついに下着もするすると脱がされる。

「ベッドに上がろ」
「ん……」

　抱えられた体は浮き、ふたりでベッドに上がる。すぐに背中に柔らかい感触が触れた。俺を寝かせた広尾も服を脱いでいく。いつもの落ち着いた様子ではなく少し乱暴に脱ぐ姿に、切ない痛みが胸に走った。

「日高、今さらだけど、いいよね？　お願い、俺だけに日高を感じさせて。俺だけに全部見せて」
「……べつに、お願いなんてしなくていいから」
「続けていいってこと……？」
「……ん。俺だって、期待してた」

　こんなことを言うのも、広尾に裸を見られるのも、俺の全部を知られるのも恥ずかしくて全身が沸騰しそうだ。けど誤魔化したりしたくなかった。広尾の顔はまた雄の面を強く出す。ぎらついている瞳は俺を求めていた。

「いっぱい気持ち良くなろうね、日高」
「っん……ん、んっ」

　今度は直接、熱の中心を触られまた吐息をもらす。撫でていた手はまとわりつき、全体を扱き出した。