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俺だけを特別にして
「はぁっ、っん」
「っ」
カーテンを閉めた薄暗い部屋で吐息が溶け合う。普段俺が寝ているベッドの上に、広尾とふたり座っていた。制服はまだ着ているが、シャツははだけ、ズボンと下着はずり落ちている。
俺の部屋で向かい合い、お互いがお互いの熱を扱いていた。
「ん、んっ、あっ」
「っ、これ、えろいね」
「っあ……ん、えろい」
恥ずかしい、けど気持ち良い。広尾と同時に気持ち良くなっていることに幸せを感じるとともに、制服でするいやらしさがあった。
「んんっ、ひろお、も、やめとこ……っ、あっ」
「どうして? 気持ち良くない?」
「きもちい、から……そろそろ、つぎのこと、したい」
「次のこと?」
俺が何を言いたいか絶対にわかっているだろうに、広尾は焦らすように聞き返してきた。その間も手の動きは続いているから、声をもらし体を震わせる。
余裕がなくなった俺は熱を握る手を止めてしまう。ただ俺だけが広尾に攻めたてられていた。
「んっ、あっ……いれて、ひろお。いっしょに、きもちよくなろ」
「っ……」
扱いていた手がぴたりと止まる。それに安心するとともに、持て余した熱をどうにかしたい疼きが生まれた。物足りなさに体がじんじんする。
「体、倒すよ」
「ん……」
ズボンと下着が抜き取られたかと思うと、すぐに体をうつ伏せに倒される。そえられた手が腰を持ち上げ、尻を突き出す格好になった。
「は、はずかし……」
「大丈夫、よく見えるよ」
「ウソだろ……」
顔から火が出そうだった。自分が望んだこととはいえ、恥ずかしすぎてシーツにくるまりたくなる。しかしどうにか恥ずかしさに耐えていると、割れ目に熱いものが押し付けられた。今日は指ではなく、早速広尾の熱の先端が、ぐりぐりと押し込んでくる。
「ん、あっ、ひろお……っ」
「っ、はいってくの、わかる?」
「あ、あっ、……わかる、おれのなか、はいってくるっ」
押し広げ、侵食してくる熱。ぬちぬちと音をたてながら抜き差しが始まった。中が擦られる度、喘ぎ、また快感を募らせていく。
「あっ、あぁっ、ん」
「気持ちいい? ね、どう? 信弘」
「んっ、はぁっ」
突然呼ばれた名前に体の奥がきゅんと縮む。締め付けられた広尾も短い息をもらした。ふたりで一緒に気持ち良くなっていることがわかり、またきゅうっと締まる。
「俺が知らない信弘を知ってる人がいると思うと嫉妬で狂いそうだよ」
「あっ、あっ、あぁっ」
「だから、今もこれからも、ずっと俺だけを特別にして」
「ん、んんっ」
容赦ない腰の動きに呼吸もままならなくなる。以前は広尾の強すぎる想いに怖さを感じてもいたのに、今はそれだけ求められ愛されていることが嬉しかった。
「んぅっ、あっ……とくべつ、やすしだけが、とくべつっ」
「嬉しい……ずっとだよ。ずっと一緒だよ」
「あぁっはぁっ、やすしっ、やすしぃっ」
俺の言葉を聞いた広尾――寿はさらに動きを速めた。後ろから好き勝手に突かれ、何度も何度も貪られる。積もっていく快感は俺を限界へと向かわせた。
「好き、好きだよっ」
「あ、あっ、あぁっ、んんーっ」
頭からつま先まで全身がびりびりと痺れる。打ち寄せる快感に抗わず、俺は熱を弾けさせた。
激しかった動きも止まり、ハァハァと荒い息が繰り返される。体を震わせる俺から、寿の熱が出ていった。
「はぁっ、はぁっ」
ふたりでベッドに沈む。隣に横たわった寿の顔が近づいてきたかと思うと、唇が触れ合った。ねだるような動きに、切なさに似た痛みが走る。自然と「好きだなぁ」と思った。
「んっ」
「はぁっ……気持ち良かったね」
「ふっ、んぅ」
唇の間から舌が入り込み、俺の舌に絡まっていく。余韻に浸るというよりも、まだお互いを感じていたくて、深いキスは終わることなく繰り返された。
「ん、ん……っ」
キスを続けながら熱い手が肌を撫でつけ、腹から胸へと上がってくる。突起を擦られ俺はまた体をくねらせた。
「は、ぁっ……っんぅ」
吐息をもらす俺に寿は嬉しそうに擦り寄ってくる。甘ったるい瞳に問われている気がして、小さく頷いた。唇を離した寿は俺に跨り、色気たっぷりに微笑む。見慣れた部屋のはずなのに、どこか知らない場所に思えた。
「もう一度、信弘を感じさせて」
「っ」
腹の奥にまた、ずくっと熱が灯る。寿は俺に捕らわれているし、俺は寿に捕らわれている。飽きもせずにただお互いを求めた。
肌をすべる手に翻弄されながら、俺は再び甘い声をもらしていく。今はまだ、どうしても寿から離れたくない。
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