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「正常かどうか、これから時間をかけてしっかり鑑定してあげるわよ」
「はあァ? ナメてんのか、お前!」
バンッ、と音を立てて机を叩いたので、堀くんが積み上げていたファイルの山がずるりと滑った。
一番上に置いた薄っぺらい書類がふわりと舞い上がってリノリウムの床に着地する。
キラキラと気持ち悪いくらいに輝きはじめた万堂の双眸が私を射抜く。
さっきから極端に瞬きの回数が、少ない。
「ねええ。信じてよぉ」
うるうると染み渡る子どものような無垢な瞳から私は目を離さなかった。
「信じて、せんせえ。僕じゃないんですう」
はっきりと分かるほど涙を溜めて、万堂は顔を歪めて肩を震わせた。
「どうして信じてくれないの。僕は無実だ、無実なんですよ、ねえええ」
書類を拾ってきた堀くんが息を呑んだのが分かった。
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