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「さあて、センセー? 僕は正常でしょうか、それとも異常な変質者でしょうか!」
チロリとまた舌先が薄い唇を這う。
「調べ甲斐がありそうで、腕が鳴るわ」
「涼しい顔しちゃってえ。鑑定できるもんなら、してみろよ!」
万堂哲人のツバが飛んできた。
近距離でけたたましく張り上げているのだから当然だが、飛沫を浴びた瞬間、背中を嫌悪感が駆け上った。
今度は確実で明確な不快感だ、それ以外ではあり得ない。
そのことに私はなぜか少し安心した。
「では早速明日から、いくつか心理試験を受けてもらいますね。それが終わったら、面接。そういう予定でどうかしら」
「拒否権はなさそうだな」
フンと鼻を鳴らして万堂は靴先で床をトトンと突っついた。
「そうしてくれるとありがたいわね」
万堂は口先で嗤いながら睨みつけた。
顔の上下で表情が食い違っている。
鋭い目には敵対を、薄い唇には明らかな軽蔑を宿して。
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