一、ハバネラ(恋は野の鳥)

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「さあて、センセー? 僕は正常でしょうか、それとも異常な変質者でしょうか!」  チロリとまた舌先が薄い唇を這う。 「調べ甲斐がありそうで、腕が鳴るわ」 「涼しい顔しちゃってえ。鑑定できるもんなら、してみろよ!」  万堂哲人のツバが飛んできた。  近距離でけたたましく張り上げているのだから当然だが、飛沫を浴びた瞬間、背中を嫌悪感が駆け上った。  今度は確実で明確な不快感だ、それ以外ではあり得ない。  そのことに私はなぜか少し安心した。 「では早速明日から、いくつか心理試験を受けてもらいますね。それが終わったら、面接。そういう予定でどうかしら」 「拒否権はなさそうだな」  フンと鼻を鳴らして万堂は靴先で床をトトンと突っついた。 「そうしてくれるとありがたいわね」  万堂は口先で嗤いながら睨みつけた。  顔の上下で表情が食い違っている。  鋭い目には敵対を、薄い唇には明らかな軽蔑を宿して。
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