一、ハバネラ(恋は野の鳥)

22/53

60人が本棚に入れています
本棚に追加
/354ページ
 私は二枚目を回収して三枚目のカードは裏向きのまま渡した。 「続けて?」  万堂は一瞬ほんの数ミリ眉を動かしたが、裏返したままのカードをめくろうとせずに口を開いた。 「ねえセンセ。ところで一つ、確認しておきたいことがあるんだけど」 「何でしょうか」  机の上に片肘を残して半身を捻り、万堂は斜め後ろへ流し目をくれた。 「あのさあ、あんたらって、やっぱりデキてんの?」  ガシャと音を立てて堀くんが机の上の筆記用具をひっくり返した。  私はじんわりと口の端を吊り上げて聞き返す。  この男、面白い。 「なぜ、そう思いましたか?」  音もなくこちらに視線を戻して万堂は舌先をひらめかした。 「いや、だってあの男、ずいぶんあんたのこと尊敬しているように見えたから」  心理試験は実質それで終わった。  ほとんどのスコアは使い物にもならないだろうが、彼の人間性が少しは見え始めたと思った。
/354ページ

最初のコメントを投稿しよう!

60人が本棚に入れています
本棚に追加