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「一言で言えば標準値なんですが……これもアテにはできませんよね」
「なるほど」
IQ試験もお気に召さなかったと見えて、ケアレスミスで済まない量の誤答が並んでいる。
かと思えば、よほど考えないと答えられないような高度な問題は連続して正解していたりして、どうも彼は問題を選んで回答しているようだ。
「まともに測定したら、なかなかの好成績が期待できそうね」
「かも、しれません」
神妙な顔で堀くんが頷いた。
旧式のエアコンが頭上でガーガーと嫌な音を立てる。
私は一応来客用にしている、クッションの潰れたソファから天井を見上げた。
古臭い天井をスクリーンにあの男のいやらしい嘲笑が浮かんで見えた。
「まあいいわ。知能には問題がなく、性格には何らかの偏りが見られる、ということにしておきましょう」
「いいんですかそれで。試験した意味が……」
「だって仕方ないでしょう。心理試験は、まともに受験しない人間を分類できないわ。わかることは、彼が非常に非協力的だということ。そしてそれは、最初っから予想していたことだからね」
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