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万堂のために用意した新しいファイルはまだ厚みが少ない。
表紙に貼られたシールの万堂哲人という文字を指先で軽く弾いた。
「先が思いやられます」
「そう? 私はちょっと興味が湧いてきたんだけど」
あの男、取り澄ました顔の裏にどんな怪物を飼っているんだろう。
私たちに見られたくないような、一体何が、あの中に眠っているんだろう。
あるはずだ。
そうでなければ、ここまで反抗的な態度に出ない。
美しい殺人鬼の奥に巣食う、怪物……。
「うわあ、悪い顔」
堀くんが目を細めて唇をひしゃげさせた。
「堀さんは興味ないの?」
「んー。そうですね。庵野さんほどは、ないと思いますけど。でもこんなにいい加減なヤツの精神鑑定なんて、実際どうやって進めるつもりなんですか? 何か秘策でも……?」
「正攻法で行くわよ」
どうやら彼はひどく性格の歪んだ、頭のいい人間のようだから。
「正攻法とは?」
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