一、ハバネラ(恋は野の鳥)

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「なんだその言い方。頭おかしいんじゃねえのか!」 「だから私にお鉢が回ってきたんだってば。しらばっくれるにしても妙だから、警察も裁判所も手を焼いているみたい。何考えてるのかさっぱり分かんないって。それにいつも言ってるでしょう、先入観は真実を曇らせるのよ。若い頃、私の師匠が……」 「あーはいはい。アメリカの異常犯罪の権威の先生ね。FBIだかなんだかの」  うんざりしています、と眉毛と唇をおんなじ形にへし曲げて堀くんが肩をすくめる。  私、そんなに何度も言ってるんだろうか。  自覚はないのだが、あのアメリカ留学は私の人生でもっとも有意義な期間だったとは確かに常々思っている。  アカデミーでの勉強は私の青春そのも……、まあいい。  万堂に意識を戻そう。  やっているのか、いないのか。  ふたつにひとつの単純な話だ。  ここで間違うことは許されないので、丁半賭博はいただけない。 「とにかく! 先入観は極力排していきましょう。お互いにね。私にもそういう傾向が出てきたら、遠慮なく指摘してほしいわ」 「承知つかまつりました」  このワードが出たら、私たちの言い合いはそこで終了だ。  それ以上は引きずらないと、ルールで決めている。  平行線はどこまで伸ばしても交わらない。  時間が無駄になるだけだ。
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