60人が本棚に入れています
本棚に追加
/354ページ
「テストの結果、どうでした?」
挨拶もそこそこに万堂哲人がそう訊いてきた。
「おおいに参考になりましたよ。ご協力どうも、ありがとう」
万堂は特に目立った反応はしてこなかった。
「で、今日からは何を?」
「そうね、まずは世間話でもしようかしら。あなたも、見ず知らずの精神科医になんて何も話す気にならないでしょう」
否定も肯定も返らない。私は構うことなく続けた。
「好きな女性のタイプは?」
「はは、なかなかセクハラ指数高めですね」
「あなたに言われたくないわねえ」
軽い手応えを感じたので私は万堂の目を覗き込んだ。
「たとえば髪型で言ったら、ロングとショート、どっちが好きなの?」
「ねえ、それのどこが世間話なんですか」
上目遣いになるように敢えて大きく顎を引いて、万堂が口先だけ笑った。
悪くない反応。
もう一歩踏み込んでみることにする。
「私はショートカットの女の子って、かわいいと思うわ。若い子は特に」
「ロングヘアの女性を目の前にして、ショートカットが好きと言い切る勇気は僕にはありませんけど?」
「あら。お気遣いありがとう」
最初のコメントを投稿しよう!