一、ハバネラ(恋は野の鳥)

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「テストの結果、どうでした?」  挨拶もそこそこに万堂哲人がそう訊いてきた。 「おおいに参考になりましたよ。ご協力どうも、ありがとう」  万堂は特に目立った反応はしてこなかった。 「で、今日からは何を?」 「そうね、まずは世間話でもしようかしら。あなたも、見ず知らずの精神科医になんて何も話す気にならないでしょう」  否定も肯定も返らない。私は構うことなく続けた。 「好きな女性のタイプは?」 「はは、なかなかセクハラ指数高めですね」 「あなたに言われたくないわねえ」  軽い手応えを感じたので私は万堂の目を覗き込んだ。 「たとえば髪型で言ったら、ロングとショート、どっちが好きなの?」 「ねえ、それのどこが世間話なんですか」  上目遣いになるように敢えて大きく顎を引いて、万堂が口先だけ笑った。  悪くない反応。  もう一歩踏み込んでみることにする。 「私はショートカットの女の子って、かわいいと思うわ。若い子は特に」 「ロングヘアの女性を目の前にして、ショートカットが好きと言い切る勇気は僕にはありませんけど?」 「あら。お気遣いありがとう」
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