二、私のお母さん

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二、私のお母さん

 東京ロングヘア殺人の事件現場は凄惨を極める。  四件のうち二件が河川敷、二件は雑木林。  いずれも東京都内という共通点はあるが、川と山というまったく性質の違う場所が選ばれているのは興味深い。  犯人は事件現場の選定にこだわりが少ない。  この四箇所をマークした地図を見ても、何らかの法則性は見当たらず、そこから察するに住宅地などで被害者を拉致した後、車をいくらか走らせて人気のない場所へ行き、そこで犯行に及ぶというスタイルのようだ。  しいて共通点を言えば拉致した後ほぼ必ず西へ向かうのだが、これが西に犯人の自宅があるからなのかどうかは分からない。  なお、万堂の一人暮らしの部屋は都心にほど近い場所にあるので、この地図で言ったら犯行現場よりも拉致現場の方に近くなる。  万堂の犯行と仮定すると、わざわざ自分の部屋を通り越して都下の方まで出かけて殺し、また帰ってきて翌朝は出勤、ということになりそうだ。  おかしいとは思わないが、ご苦労なことだとは言っておきたい。  労う気はひとつも起きないけれど。  この事件はいつも平日の夜間に起きている。  だいたい午後十時台に被害者が拉致され、犯行は深夜、それが発見されるまでには数時間から数日を要するというのがお決まりだが、犯行の曜日に規則は見られない。
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