二、私のお母さん

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 そのため早くから警察では、この犯人は独身の勤め人だろうと考えていたそうだ。  そのプロファイルに万堂はとりあえず当てはまっている。  シフト制勤務なのではないかという見立てもあったそうだが、結果から言うと万堂の勤務は土日が休みの完全週休二日制(一部大型連休、年末年始を除く)、シフト制は採用されていない職場であった。 「移動……か」  犯人がわざわざ場所を変えて犯行に及ぶというのもまた、計画性や慎重さを感じさせる。  突発的・衝動的殺人ならその場で殺してしまいそうなものだが、犯人は邪魔をされない場所まで車で被害者を連れて行き、じっくりと時間をかけて血祭りにあげるのが好きなのだ。  その場所は必ず野外。  四件のうちにはひとつとして、屋内で行われた犯罪はなかった。  ぺらりと音を立てて何度も開いたページをめくる。  犯行現場の写真。  気味のいいものではないが、とうに見慣れてしまった。  私はこういう写真は昔から飽きるほど見ている。  堀くんは最初にこれを見たとき「うっ」と呻いて強い音を立ててファイルを閉じた。  まあそれが極めて正常な反応だとは分かっている。  分かってはいるが、極めて正常な精神の人間にこのテの仕事が務まるものかどうかは定かではない。
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