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基本的に検察は犯人が精神障害であっては困るのだ。
刑法第三十九条。
心神喪失者の行為は、罰しない。心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。
検察は犯人は犯行時に正常な判断力を有していたのだから罰するべきだと主張するし、弁護側は心神耗弱だから減刑してくれと言ってくる。
どのように鑑定したところで、どちらかからは猛烈にバッシングされるのが宿命なのだ。
精神鑑定を引き受ける研究者や医師の間でも、犯人との接見よりも裁判での証言がおっくうだと言う者は多い。
口下手のため裁判に関わりたくないからといって、鑑定を断る者も一人や二人ではない。
私だってこれほどまでに犯罪者に興味を持っていなければ、精神鑑定など引き受けなかっただろうと思う。
私は殺人犯と対話をするのが、好きなのだ。
精神鑑定を引き受ければ、アクリル板越しの面会などとは比べ物にならないほど濃密に、殺人犯と対話ができる。
彼らの世界に入り込むことができる。
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