二、私のお母さん

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 と私は答えた。  幸い私はロングヘアの女だ。  彼のお好みの年齢からはややファウルしてしまったかもしれないが、まだ一応女の数には入るだろう。  高齢出産のリスクにさえ目をつぶれば生物学的には充分出産可能。  どこから文句が来ても反論できるくらいに、私は女だ。  いまのところは。 「いいんですか! ありがとうございます、庵野先生。もうあなたに断られたら後がないと思っていたんですよ。それじゃ早速資料を送らせていただきますね。研究室の部屋番号は何番でしたっけ」  そこからはトントン拍子で話が決まった。  鋼の女などというしょうもないあだ名も、たまには役に立つものである。 「万堂哲人……さあて、どんな男かしらね」  彼に会うのが楽しみだと思っていた。  他の殺人者たちと同じように考えていた。  私にはあいにく千里眼なんかないのだ。  そして情けないことに、女のカンというやつも、まったく。
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