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ああそう言えば、この女が死んだら葬式はするのかしら、あれうちって何宗だったっけ、と考えて一瞬手を止めていたら背中をさすってもらえるのかと期待した目で見てきやがったので、私は口先だけニヤつかせて言った。
「せいぜい苦しんでねえ、お、母、さん!」
「この、鬼!」
「鬼で結構。もうすぐ仏様のように優しいヘルパーさんが来てくれるわよ? 早く時間が過ぎるのを祈っていなさい」
ゲタゲタと下品な笑いを響かせて私は悪臭の染み付いた部屋を閉める。
また後ろでなんか喚く声がしたが、どうだっていい。
鬼母などという言葉は昔からあるが、倣って言えば私は鬼娘。
何とでも言えばいい。
私は母親が嫌いだ。
大嫌いなのだ。
あの女がこんな風になる前から大嫌いだった。
早く死んでくれたらいいのに、と物心ついてしばらくした時には考えていたのを覚えているし、実際に口にしたような気もする。
あの女はいつだって、頭が悪くて意地悪な最低の母親だった。
私が今、そういう最低の娘であるように。
絶対にいつかやり返してやると思いながら今日までジリジリ生きてきた。
こういうチャンスが巡ってきて、私は本当に運がいいと思う。
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