二、私のお母さん

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 そうだベランダのプランターに水をやらなくちゃ。  今日の予報は晴天、気温三十度。  地獄のような炎天はこの時間帯から燃え盛っている。  元気だった頃に母が買いそろえた植物に罪はないけど、オバケみたいに葉が大きくなりすぎたあの花の名前も知らないし、奇麗だなんて思ったこともない。  一度だってない。  園芸用に品種改良された小花も、ちょっと世話を怠れば野生に返って猛々しくなる。  雑草に負けない勢いで生い茂っているのを見ると世話をする気も失せてくる。  栄養剤なんてひとつも与えないのにプランターをぶち破る勢いで、水なんてやらなくても枯れそうにもないじゃないの。  かわいく咲いていられる花は、手をかけ愛情をかけられた、優等生だけと決まっているのだ。
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