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「おはようございますう、ひまわりサービスの鳴海ですう」
「お早うございます、今日もよろしくお願いいたします」
必要以上ににこやかに微笑んだ私は通勤用のスーツで完全武装している。
母にも花柄の半袖シャツを着せてある。
身体に痕のつくようなヘマはしていないから、絶対にバレないのだ。
「あらあら、おばあちゃん、キレイなシャツねえ。よくお似合いだわあ」
人のいい丸顔のヘルパー。
にこにこして、ただでさえ目立たない目がほとんど線になっている。
私より年上のこの人は、気づかない。
この家に立ち込めるどす黒い呪詛は常人には見えないのだ。
「じゃあ、お母さん。デイ楽しんで来てね。私は今日も仕事で……また遅くなるかもしれないわ」
「そうかい」
この見栄っ張りの老婆だって言わない。
震える手足でヨロヨロしても、絶対に他人様に訴え出ることはしない。
あたし娘にいじめられているんです。
あたしが若い頃、娘にしたのと同じように、ひどいことをやりかえされているんです。
そんなこと、言えるわけないわね。
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