二、私のお母さん

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「おはようございますう、ひまわりサービスの鳴海ですう」 「お早うございます、今日もよろしくお願いいたします」  必要以上ににこやかに微笑んだ私は通勤用のスーツで完全武装している。  母にも花柄の半袖シャツを着せてある。  身体に痕のつくようなヘマはしていないから、絶対にバレないのだ。 「あらあら、おばあちゃん、キレイなシャツねえ。よくお似合いだわあ」  人のいい丸顔のヘルパー。  にこにこして、ただでさえ目立たない目がほとんど線になっている。  私より年上のこの人は、気づかない。  この家に立ち込めるどす黒い呪詛は常人には見えないのだ。 「じゃあ、お母さん。デイ楽しんで来てね。私は今日も仕事で……また遅くなるかもしれないわ」 「そうかい」  この見栄っ張りの老婆だって言わない。  震える手足でヨロヨロしても、絶対に他人様に訴え出ることはしない。  あたし娘にいじめられているんです。  あたしが若い頃、娘にしたのと同じように、ひどいことをやりかえされているんです。  そんなこと、言えるわけないわね。
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