一、ハバネラ(恋は野の鳥)

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 私は見た。  世間から憎まれ恐れられている、連続殺人犯の顔を、まっすぐに見つめた。  瞬間はっとするほどの圧が私の目に飛び込んで来て心臓に刺さった。  万堂哲人は、何かの間違いじゃないかと思うほど若くて美しい外見を、していた。  私が知る殺人犯の中ではぶっちぎりの容姿だ。  写真では知っていても婦女暴行犯ならどうせ見た目が「そう」なんだろうとタカをくくっていたことは認める。  だが、それにしたって……。  人は見かけによらないとは言うけれども、これだけ外見に恵まれているなら無理強いなんてしなくても、いくらでも思慮の浅い女が引っ掛けられそうなものじゃないの。  私はよく知らないけれど、そこらへんの飲み屋でもクラブでも。  やりようはいくらだってあるはずなのに、どうして、わざわざ? 「僕、やってないですよ」  簡単な挨拶の後すぐに、訊いてもいないのに万堂の方からそう言ってきた。
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