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私はきゅっと口角を上げてみせる。
溌溂としたキャリアウーマン役をこなして。
「おばあちゃんは、恵まれているわねえ。こんなしっかりした娘さんにお世話してもらえて。よかったねえ、きっと、今までいいことをしてきたから、いいことが返ってくるんですねえ。立派に子育てしてきた甲斐があったねえ」
「あら、そんな。しっかりなんてとてもとても。本職のヘルパー様に比べたら至らなくて。ただ、身内ですから、今までの感謝を込めることくらいしか、できません。ここまで育てていただいた恩をたっぷりと、お返ししたいだけなんです」
「それが、なによりですよお。ね、おばあちゃん」
母はぎゅっと口を真一文字に閉じて、力ない目で私を見つめた。
悔しいか、クソババァ。
私は腹の中で舌を出す。
私は悔しかった。
無力な子どもだった頃、外面のいいお前のせいで、親友だと思っていた友だちのお母さんに本当のことを言ったのに気のせいだと笑われた時、悔しかった。
信じてももらえないなら二度と誰にも言うもんかと思った。
誰にも言わずに耐えて耐えて、そうしていつか必ず何倍にもして返してやろうと思っていた。
やられっぱなしでやり返さないなんて、私には耐えられない。
そんなの私の流儀じゃない。
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