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「午後からの面接は初めてじゃないかな、センセ?」
「そうかもね。じゃあ、こんにちは。ということで」
何故か今日は万堂の機嫌がよかった。
理由があるのかないのかも、私にはまだ分からない。
万堂は行儀悪く片脚を揺らしながら、身体を斜めに座っている。
長い脚を持て余しているとも見えるが、これは警戒か。
機嫌の良さとは一致しないボディランゲージ。
相変わらずお奇麗な顔面には余裕を浮かべている。
「小さい頃の話を聞かせて」
「小さい頃?」
わずかに万堂の眉がヒクついた。
「あなただって小さい頃くらいあったでしょう。どんな子どもだった? ううん、まずはそうねえ。一番古い記憶を教えて?」
万堂は無表情のまま天窓から差し込む光に視線を転じた。
待つ。
万堂が口を開いた。
「僕、あんまり昔の記憶がないんで」
「またまた。なんでもいいのよ。なんなら作り話でも、かまわないわ」
「いや、ほんとに。僕には幼少期の記憶はほとんど、ない。いくつかないこともないんだけど、それが本物の記憶だという実感はない。なぜなら、僕の記憶の中に僕自身の姿が入ってしまっているからだ」
明解な説明だった。
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