一、ハバネラ(恋は野の鳥)

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「調書に書いてあることはほとんどがデタラメなんです。警察の作ったストーリーに当てはめて、無理やり、僕がやったことにされているんです」 「そうなの」  肯定にも否定にも聞こえないようにわざとフラットな相槌を打った。  万堂は堀くんなんて目に入らないというように、私だけを見据えて続けた。 「信じてくれないんですか。僕、やってないんですよ。たまたまそこにいただけ。何の証拠もないんですよ。それなのにずっと拘置所に閉じ込められて、ようやく出られたと思ったら今度はこんなところで、精神鑑定って。なんなんですか、ほんとに」 「精神鑑定に不服なの?」 「昨日まではね。でも庵野センセーになら鑑定されてもいいかなあ」  調子のいいことを言ってチロリと舌先で軽く唇を舐めた。  ゾクンと背中に何かが響いた。  快感よりは嫌悪感に近いと思うが、顔に出さないようにでも目は逸らさずに答えた。 「それはどうも」
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