二、私のお母さん

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「堀さんがいてくれて、助かったわ」  さっきの面接で疲労という名のデイパックを背負い込んだ気がする。  気分転換と称して立ち寄ったカフェに堀くんも付き合ってくれた。  眩しいくらいに太陽がたっぷり採光された開放的な店内。  そこかしこからお喋りの声は聞こえてきているが、視界を遮るように置かれた常緑の観賞植物がうまくパーテーションになっている。  心理的には正解だが、こういう設計を見ると心地のよさより先に作為を感じて萎えるのは、これも職業病の一種なのだろうか。 「いや。俺は何も……」 「いてくれるだけで安心感が違うものよ。いてくれなかったら、もっとビビッていたかもしれないわね」 「ビビッてなんか、なかったじゃないですか」  私はコーヒー味のフローズンドリンクにストローを突き立てて笑った。  本格的なエスプレッソが使われて、味はよかった。  身体の中にすうっと溶け込むように焦げ茶色したカフェインが染み渡っていく。 「そう見えていたなら、上出来よね」 「肝が据わってるんだなあって、俺、ほんと尊敬してます。尊敬はしてますけど、本当に危ないときもあると思うんで……」
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