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彼女がいるのか、という質問をされて、正直俺は呆気にとられた。
14歳でしかも初対面の少女が突然こんな25歳の男に何を聞いているんだ。
「えっと・・・なんで?」
「教えて!おじさんは彼女はいるの!?」
さっきの恥ずかしがりやを思わせない積極的な質問攻め。
どう答えるもんかと困ったが、ここで嘘を吐く理由もないかと嘆息して素直に答えた。
「いないよ。仕事もまだ軌道に乗ったわけじゃないし、しばらくは作る気はないかな」
「そ、そうなんだ!」
いないと言った途端、栞良はパッと目を輝かせて喜んだ。
そこでようやく俺は墓穴を掘ってしまったと気付く。
これは素直に答えるべきじゃなかった。
「えっと栞良ちゃ」
「栞良でいいよ♪」
「いや、初対面なのにいきなり呼び捨ては」
「か・ん・ら!!」
さっきまでのモジモジはどこへやら、栞良はぐいぐいと俺に迫ってきた。
今時の思春期ってこえー・・・。
押しの強さに根負けして名前を呼ぶ。
「じゃあ・・・栞良」
「なぁに♪」
「・・・・・・何考えているかわからないけど、俺は今仕事に忙しくて君に構っている暇はない」
「うん?」
「だからまぁ、隣人としてたまに挨拶する程度の関係で頼むよ」
「どうして?」
栞良はキョトンとした顔をした。
いや、どうしてはこっちのセリフだ。
なんで食い下がる。
「・・・・・・聞いてもいいかな」
「なに?」
「なんで君に俺の彼女の有無が必要なのか」
「え?大事なことだから」
栞良は質問の内容がいまいち理解できないのか不思議そうな顔をしている。
扱いにくい・・・。
頭を抱えると、栞良は満面の笑顔で続けた。
「かんらは、おじさんに一目惚れしました。だから彼女の有無を聞いた。それだけ」
「君ね」
「か・ん・ら!」
「・・・・・・栞良、君はいくつだ?」
「14歳のかわいい中学生♪」
「・・・・・・俺は25歳の成人の男だ。冷静に考えれば絶対に君に手を出しちゃいけない。それはわかるな?」
「わからない」
サラリと返されて俺は頭が痛くなった。
「青少年保護法ってのがあってだな」
「でも先生が言ってたよ。恋愛に歳の差は関係ないって」
おいおい、今の教師はそんなこと言ってんのかよ。
困ったな。
「とにかく、俺に彼女がいようがいまいが、君には関係ないことだ。くれぐれも余計な感情は持つな」
「なんで?」
「なんでもだ。話はそれだけだから俺は家に戻る」
栞良の手を振りほどいて部屋に戻ろうとしたその時。
完全に扉を開けた栞良が俺の胸に飛び込んできた。
「好きになっちゃダメなの?」
「・・・・・・あのな、栞良」
「今の話聞いて、ますますおじさんが好きになったよ。だからやっぱりおじさんの彼女になりたい。ダメ?」
「ダメに決まってんだろ」
「でもエッチしなきゃいいでしょ?」
栞良は上目遣いでそう質問してきた。
おい、未成年がそんな言葉吐くなっての。
栞良の肩を掴んで引き離し、注意する。
「そういう問題じゃない。き・・・栞良はまだ14歳なわけだし、こんなお・・・おじさんにそんなこと言うな」
「好きな人に好きだって言うコトがダメなコト?」
初めて子供が苦手だと思った。
そんなキラキラした眼で好きになることさえ問われるといけないとは言えないじゃないか。
これだったら彼女いると答えりゃよかったかな。
内心自分の発言を後悔していると、栞良は俺の背中に手を回して強く抱きついてきた。
「好き。だから栞良を彼女にして?」
潤んだ目の美少女が目の前でそんなこと言ってみろよ。同世代なら確実にオチてんぞ。
決してロリコンじゃない俺ですらちょっとグラついたぐらいだからな。
何言っても食い下がって来る気だろうな、この子。
なんで?どうして?を駆使して。
どうせガキのおままごとみたいなもんで、同世代に好きな相手が出来たら飽きるだろう。
今は合わせとくか。
「わかった。でも、俺は忙しいからデートなんかも出来ないほんっとつまらんもんになるぞ。それでもい」
「やったーっ」
忠告を終わる前に栞良が満面の笑顔でぴょんぴょん跳ねて喜び始めた。
「話を聞け」
「デート出来ないんでしょ?いいもんっ。あ、でも邪魔しないからおうちには行ってもいい?」
「・・・・・・行っても俺は仕事優先するからな」
「くっつくのはいい?」
「・・・・・・楽しいのかそれ」
「かんらはおじさんにくっついてるだけでも十分♪うれしーなぁ♪」
彼女にしてもらえただけでこのテンション。
第一印象はどこ行ったんだホント。
というわけで、半ば強引な形でこの14歳美少女は俺の彼女となったわけである。
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