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「そりゃそうだろ」
そのことをおじさんに相談すると、おじさんに一刀両断されてしまった。
執筆期間だから夕飯の時に言ったんだけど、あまりにあっさり肯定されたから少しショックだった。
「か、かんらの弁護してくれないの・・・?」
「一般論はそうだって言ってんだ。お前らが3歳相手にしてるのと同じだろ」
「・・・・・・でも、私真剣に好きなんだよ。それを・・・簡単に否定されるの辛いよぉ・・・」
「・・・こればっかりは仕方がないことだな」
食事が終わったおじさんはちゃんと手を合わせてごちそうさまって言って立ち上がった。
そして私の頭を撫でた。
「今日はお父さんが早く帰って来る日じゃなかったか?さっさと食べて家帰れ」
「・・・・・・帰って来ないもん」
「え?」
「久しぶりに早く帰れそうだから恋人さんのところへ行くみたい」
私には、同僚と飲んでくるって言ったけど。
パパはいつもそう。中小企業の会社員で、毎日帰る時間は遅い。深夜に帰って来るから私はそれまでに夕飯を作っておく。
でも今日は早く帰れそうだよってメールが来て、ちょっと嬉しかったのにな。
ママはスナックに勤めてて、パパがいる時に家にはいなくて2人はあんまり顔を合わせない。
だからとっても冷え切ってて、一緒にいる時も会話がない。そして、2人とも別の恋人さんがいる。
お互いに、多分知らない。顔合わせるの少ないから気付いていない。
でも私は相手がどんな人か、知ってる。
パパの恋人さんは同じ会社で同じ部署に勤める20代のカワイイ感じの女のヒト。まだパパが浮気してなかった時に他の同僚さんと一緒に家に来たことがある。
気付いたのはパパがその人の話をよくするようになったから。
だから気になって夜、変装してパパの会社に行って後を付けたら案の定、パパは繁華街のラブホテルへ入っていった。
正直、あんまりショックじゃなかった。
だってその時はもう、ママには恋人さんがいたから。
ママの恋人さんはお店のお客さんで、社長さん。
パパと違うのはママは堂々と私にその人を紹介したこと。パパには内緒ねと念押しされた。
夜の仕事のせいなのか、ママは浮気していることを楽しんでいるみたいだった。でもあくまで離婚するつもりはないらしい。
結婚した人がいるのに、堂々と他の人と寝る両親。
私はそれを受け入れながらも、どこかでいつもひそかに憎んでる。
「栞良」
名前を呼ばれて我に返った。
いつの間にかおじさんが私の前で片膝をついていた。
おじさんを心配させちゃった。そう思って取り繕う。
「でも全然平気だよ!もう慣れっこだもん♪だから今日は家に帰っても一人なんだよねぇ」
「・・・・・・じゃあ、うちに泊まるか?」
「え?」
予想に反した返しに私は思わず聞き返してしまった。
おじさんは真剣な顔で私の手を取った。
「ただ、ちゃんとお父さんには友達の家に泊まるって言っとけよ。もし帰って来た時に栞良がいなかったら心配するだろうからな」
「・・・いい、の?」
「あくまで友達だぞ。恋人なんて言ったら飛んで帰って来るかもしれないからな」
「じゃあ、おじさんの執筆部屋で寝ていい?」
服の袖を掴んで震えそうになる声を押さえながら聞く。
おじさんのそばにいたい。1人で寝たくない。
そう願いながら聞く私におじさんはクスッと笑った。
「寒いだろうからちゃんと俺の部屋の布団持って来いよ」
「うん!おじさん、大好き!!」
「はいはい」
私の告白をおじさんは苦笑しながら受け入れてくれたから私の心は一気に幸せな気持ちでいっぱいになった。
いつもはキスさえ許してくれないけど、時折優しくしてくれるおじさんが私は本当に大好きだよ。
最初からそうだった。
私を不安がらせないようにいろいろと気遣ってくれた。
だから私も、おじさんが好きになったんだよ。
パパやママとは違って、誠実でちゃんと注意してくれて、たまに甘やかしてくれる、私の大好きなカレシ。
誰がなんと言おうと、私はやっぱりおじさんが好き。
だから自信持って言える。
この恋は、間違ってなんていないって。
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