あなたの奴隷にしてくれませんか?

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「ぁっ、ん、奏さ…」  今日の奏はやけに優しい。  瑠衣は肩透かしを食っていた。 「挿れるぞ、瑠衣」  いつもねじ込むように性急に挿れてくるのに、ゆっくりゆっくり挿入される。 「あっ、奏さんっ、んっぁっ」 「瑠衣っ」  ゆっくり、しかし次第に激しく律動される。 「んっ、んぅっ、奏さ、なん、で?」 「ん?」  奏がキョトンと瑠衣を見やる。 「なん、で、優し、の?」  その言葉に奏がアハハと笑う。  瑠衣は自分は何かおかしなことを言っただろうかと不思議に思う。 「酷くしてほしいか?」 「やっ、いいっ」  やがて奏が達するために激しく腰を打ち付ける。 「あっ、奏さ、イッちゃ…ぅ、も、出るッ」 「イケよ」  また、またこの心地いい声だ。その声を聴くだけで瑠衣は簡単に昇りつめる。 「んっ、あぁっ」  瑠衣は白濁を吐き出してベッドに沈んだ。  呼吸を整えていると奏が汗で張り付いた瑠衣の前髪をかき分けた。 「奴隷じゃなくていいんだよ、お前は、もう」 「え?」  俺は奏さんの奴隷だよ?奴隷としても見限られてしまうの? 「恋人になろう」  その言葉に瑠衣の瞳から涙がこぼれる。  奏の言葉が信じられなくて。 「俺、恋人に、してもら、えるの?奏さんの…」 「当り前だろ」  奏の恋人になれるなんて…そんなこと考えたこともなかった瑠衣は驚きを隠せないままに奏の顔をじっと見つめる。 「瑠衣、愛してる」  瑠衣の瞳から涙が止まらない。 「俺には奏さ、んだけです。一生、一緒にいて、ください」 「瑠衣が嫌だって言っても離さねぇよ」  奏の声が頼もしくて、瑠衣は何があっても奏と一緒にいたい。そう思った。 「奏さ、好き…」  瑠衣が半身を起こして奏に口付けた。 「ん、ぅ」  奏が瑠衣をぎゅっと抱きしめた。 「でも飯は作ってくれ」  その言葉に瑠衣はプッと吹き出した。  奏は瑠衣が居ない間、何を食べていたのだろうか。  翌日── 「奏さん、奏さん」 「あ?」  相変わらず寝起きの悪さ全開で奏が起きる。 「朝ですよ、起きてください」 「やだ、まだ寝る、瑠衣と寝る」  そう言って瑠衣の腰を抱きしめてくる。 「奏さんってば!遅刻しちゃいますよ!」  瑠衣が腰に回された腕に照れながら奏を揺すり起こす。 「ハァ…今日も仕事か…」  奏が渋々ベッドから出てくる。その様子が可愛くて。瑠衣はクスクスと笑った。奏が帰って来てくれて本当に良かった。  やっぱり俺には奏さんだけなんだ。
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