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朝ごはんに、お米とみそ汁と焼き鮭を食べながら奏が言った。
「なぁ、今度一緒に休み合わせないか?」
「俺、入ったばっかだからまだ有給ないんです」
瑠衣がしゅんと項垂れる。
「俺が瑠衣の休みに有給取るよ」
「休み合わせて何するんですか?」
瑠衣は全く何事か思い浮かばなくて疑問符を浮かべる。
「その…なんだ…児童相談所に養子縁組について話を聞きに行かないか?」
「奏さん…」
奏が少し照れたようにそう言うから。
瑠衣の瞳にみるみる内に涙が溜まる。
「他人の子供は嫌か?」
瑠衣がブンブンと頭を横に振る。
「嬉しい…俺、立派なパパになれるかな」
「は?お前はママだろ」
男なのに俺がママ⁉俺はちょっとだけ頬を膨らませる。
「ええええ」
その様子を奏がクックと笑っていた。
「俺はパパだよ!」
「いーや、お前はママだ」
奏が断固たる勢いでそう言うから。もうママでもいいか、なんて思う。
「もう!奏さん!」
奏が子供の事を考えていてくれたことが嬉しくて。これから大変だとは思うけど。でもそれでも、奏と一緒なら乗り越えて行けると思うんだ。
奏と可愛い子供を迎えられたら…
そんな幸せな事ってあるだろうか。
でも…
「奏さん…本当は嫌じゃない?俺の為に無理してませんか?」
「無理なんかしてねぇよ。お前と家族になりたいんだ瑠衣」
瑠衣の瞳から涙がこぼれる。
「俺も…俺も奏さんと家族になりたいです」
「子供…俺はまだ想像出来ないけど、きっと可愛いんだろ?」
奏が半信半疑で尋ねてくるから瑠衣はにっこり笑った。
「可愛いですよ、子供は」
その笑顔を見て奏さんが目を細めた。奴隷だった俺が奏さんの家族にしてもらえるなんて。俺には未だなんだか信じられなくて。
でも、でも奏の言葉を信じたい。
恋人にしてもらえただけでも嬉しかったのに家族になれるなんて。
ねぇ、奏さん、俺、奏さんの奴隷になって本当に良かったよ。奴隷をこんなにも幸せにしてもらえたから。
だから、奴隷で良かったんだ。必然だったんだ。
奏さんの奴隷になれて本当によかった。
ありがとう、奏さん。 - END -
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