袋小路の誠実

3 袋田の部屋。2:40

　いい加減寝ないと明日に差し支える。袋田は、気持ちの切り替えができない。電車内での自己嫌悪。そこから気持ちを立て直すことができない。著作権の消滅した名作短編をネットで拾い読みする。何かに救いを求める。頭も体も疲れ切っているのに。袋田は、このまま寝る気にはなれない。風呂にもまだ入っていない。

　生活フルプランナーは、自らが生活フルに暮らしているからこそ、人様にも生活フルを提案できる。夜更かしは、生活フルとは真逆の「損」に他ならない。会社が知ったら激怒するだろう。だが、会社での袋田は、誠実が服を着て歩いているような人、いかに寝不足でも、疲れていても、そんな素振りは決して見せない。一分の隙もない愛想笑い、誠実さである。無理をしているのではない。自然とそうなる。それ以外を袋田は知らないのである。