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それから
ーー冬。
あの告白からしばらく経って、俺は無事志望の大学に合格した。
合格したことを伝えると、皇も春太も自分のことのように喜んでくれて。
お祝いとして二人から腕時計をプレゼントされた。
ブラウンの皮ベルトにシルバーの側が光るシンプルなそれは、文字板の中央に小さくブランド名が刻印されている。
ブランドに疎いオレでも、一目でいい物だということがわかった。
きっとお洒落でセンスの良い春太が選んだのだろう。
なんだか悪い気がして受け取るのに遠慮していると、三人で着けたかったから絶対受け取ってよね!と春太が腕に着けてくれた。
そこで春太の腕にも皇の腕にも色違いだが同じ時計が着けられているのに気付く。
「お揃いの物が欲しかったし、あと…大事な受験前に迷惑かけちゃったから」
そこまで言われてしまうと貰わないわけにはいかない。
それに二人でオレの為にプレゼントを用意してくれていたことが素直に嬉しかった。
「ありがとう、すごく嬉しい」
ほわほわした気持ちが溢れて思わずニヤけてしまう。
「あーもぉ!あゆむ可愛すぎ!」
「うおっ、」
がばっと春太に抱きつかれる。
春太よりオレの方が身長が高いし骨格がしっかりしているので、倒れることはないが少しよろめいた。
「喜んでもらえて嬉しい」
すると背後から皇もすり寄ってきて、またもや二人に挟まれる形でくっつかれてしまった。
なんだこれ。
あの告白から明らかに二人からのスキンシップが多くなった。
きっかけさえあれば場所を問わず抱きつかれている気がする。
二人から好きだと告白され最初は戸惑ったものの、スキンシップ過多なことを除けばオレ達の関係に変わったことはなくて。
普通告白されたら返事をしないといけないよな?
でも二人とも聞いてこないし、正直どうすればいいのかわからないし、何も変化がないのならこのままでいいとさえ思っている。
そりゃ二人共大切な友達だけど、好きだけど、ラブじゃないのだ。
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