皇にきゅん

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「…っえ、…ぁ」 どうしよう、何も言葉が思い浮かばない。 勝手に顔に熱が集まる。 緊張から身体が硬直して、喉が乾く。 オレから何も返答がないことを肯定と捉えたのか皇の顔がどんどん近付いてくる。 「…こ、皇…っ!」 その時、すぐ上から数冊本が落下してきた。 おそらく絶妙なバランスで収納されていた本を皇が抜き取った弾みで、支えを無くして将棋倒しになった内のどれかが落ちてきたらしい。 そのまま一冊(それも結構な厚みのもの)が皇の脳天を直撃した。 「ぐ…っ!」 あまりの衝撃に皇はその場に蹲ると頭を両手で抑えた。 大きな身体を小さくして、痛みにぷるぷる震えている。 「………」 え、面白すぎないか? 「こ、皇…だ、だいじょ…ぐふっ!」 堪えられずつい吹き出してしまった。 「ご、こめ!でもっ…あは!…っふふ…」 図書室ということを思い出し慌てて口を抑えるが、中々笑いが引いてくれない。 「ぐ、ふふ…無理…っもぉ、なにしてんだよ…っっ」 ひぃーとお腹を抱えてしゃがみ込む。 皇は顔を真っ赤にしながらムッとしてオレを睨んでいた。 本気で痛かったのだろう、目が潤んでいる。 その様もなんだか可笑しくて涙が出てきた。 「ふ、ふふ…はぁ、あは…大丈夫か?」 皇の手の上から手を重ね頭を撫でる。 コブにはなっていないだろうか、なっていたらまた笑ってしまいそうだ。 「……」 「ふふ、まだ痛い?」 笑いながらそう問うと、いきなり皇に腕を引かれた。 わっ、とバランスを崩し皇の上に乗り上げる。 そのままーーー。 「んむ、!」 柔い感触に目を見開く。 皇の顔がありえないほど近くにあって、目と目が合ったまま動けない。 まるで時間が止まってしまったみたいだった。 きっと数秒のことなのに、もっと長い時間に感じられた。 ちゅ、と小さな音をたてて唇が離れる。 「っそれ以上、笑うの禁止…っ」 耳と鼻と頬を赤く染めて、目を潤ませながらこちらを睨む皇に、どきりとした。 「……え、」 キスされた。ファーストキスだった。 柔らかくて、一瞬だったけどすごく感触が残っている。 いやそれよりも…。 きゅーーんと鳴き声がしそうなぐらい弱々しく恥ずかしがる皇の姿に胸がときめいた。 って、え?ときめく?は? え?
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