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春太にきゅん
皇とキスをしたあの日から、オレは皇に対してよそよそしくなってしまっていた。
まずちゃんと目が見れないのだ。
目が合うと途端にキスされた時のことを鮮明に思い出して、顔が急激に熱くなってしまう。
以前はなんとも思わなかったのに、くっつかれると動悸がして変な汗をかいて…。
皇はいつもと変わらないのに(相変わらずスキンシップが多いが)、これじゃあ皇を意識してるのが傍目から見てもバレバレだろう。
特に春太には。
「ねーねーあゆむはどっちの色がいいと思う?」
「…どっちの色も同じに見える」
ラグのサンプルを手に取って、多分明るさが若干違うんだろうなレベルの二色で選択をせまる春太。
オレはその二色の違いが今ひとつ理解出来なくて、目を細めて凝視した。
日曜日、オレと春太は大型のショッピングモールに来ていた。
新生活で必要な諸々を買いに来たのだ。
今日は皇は不在で、なんでもバイトのシフトが急遽変更になったらしい。
どうしてもと頼まれてしまったので断れなかったようだ。
「うーん、やっぱりこっちの方が落ち着いてていいな〜でもこっちだと部屋が明るくなるし…」
顎に手を当て真剣に吟味する春太。
インテリアとか好きだもんな、手を抜きたくないのだろう。
これに関してはオレも皇も春太に一任しているので、気が済むまで悩んで欲しい。
「決めた!やっぱりリビングは皆で落ち着きたいよねってことで、こっちにしまーす」
「おー」
若干彩度が暗い方に決まったらしい。
春太は注文用紙を手に取って、さあ次々!とオレの腕に腕を絡ませてずんずん歩いた。
引っ張られるようにしてそれに着いて行く。
「ハンガーは絶対これ!この滑り止めがついてるやつね。洗濯用はこれで〜」
「ちょ、ハンガー多くないか?」
「えーだって三人だよ?クローゼット用と合わせて60本ぐらい必要じゃない?」
「オレと皇はそこまで服持ってないぞ」
「ボクが必要なんです〜あと二人もこれから増えるよきっと」
ボクが選んであげるからさ〜とるんるんな春太。
確かにハルはお洒落で身に付ける物にはこだわりがある方だろう。
今日も説明出来ないが、黒一色とシンプルなのに様になっている。
ベレー帽が似合っていて可愛らしい。
「皇はともかく、オレは着こなせない自信があけどな。ハルぐらい何でも似合うなら楽しいかもだけど、今日もお洒落だし」
「大丈夫ぶい!ハルくんに任せて〜。それと今日は一段と気合入れてきたからそう言ってくれると嬉しい〜」
えへ、と首を傾げあざとく笑う春太。
「気合?今日何かあるのか?」
「もぉ〜今日はあゆむとのデートだからでしょ!」
デート?はて?
もしかして皇がいないこの買い物のことか?
「えへへ、嬉しいなぁ。今日はいっぱい遊ぼうね」
腕を組みくっついてくる春太はすごく嬉しそうだ。
デートかは置いておいて、上機嫌な春太にオレも嬉しくなった。
ハンガー60本は流石に重いのでネットで注文することにした。
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