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それからお昼ご飯を食べたり本屋にいったりゲーセンに行ったり…盛大に寄り道をしながら目的の買出しを済ませ、少し歩き疲れたのでカフェでお茶をすることにした。
春太は始終上機嫌で、今もニコニコしながらバニララテを飲んでいる。
「あゆむは何にしたの?」
「チョコバナナフラペチーノチョコチップ入り」
「うわークリームももりもりで見てるだけで甘そう…ほんと甘党だよねぇ」
そうだろうか、クリームも無料で追加出来るならもりもりにしてもらうだろう?
「一口ちょーだい」
「ん、」
先がスプーン状になっているストローで春太の口にチョコチップをつけたクリームを運ぶ。
あーんと口を開けた春太は小さい子のようで愛らしい。
「あんま〜!でも美味しいね」
大袈裟な感想にふふ、っと笑いが漏れた。
春太は本当に人に愛される術を心得ているなと思う。
ころころ表情豊かでいつもにこやかなところとか、誰に対しても変わらない態度とか、可愛らしい仕草とか、気遣いとか、オレとは大違いだ。
「ボクのもあげる〜」
はい、と渡されたラテを一口飲んだ。
優しい甘さが口に広がって、物足りないけどホッとする味だ。
「美味しい」
「でしょ〜?というか間接キスだねぇ」
キス、という言葉にドキリとする。
春太を見るとニコニコしているが、なんだか目が据わってるような気がする。
「キスと言えばさぁ〜」
“キス“の部分をわざと強調する春太。
「皇とキスしたんだって?」
「っ!」
思わずフラペチーノが口から出るところだった。
オレは面白いぐらいに動揺してしまって、そんなオレの反応に春太はそのまま同じトーンで話を続けた。
「皇から聞いたよ〜?あーだから最近あゆむの様子がおかしいんだぁって納得」
「な、なんで正直に言うんだあいつは…」
「罪悪感じゃない?抜け駆けするの禁止って約束してたし。ほら、皇ってそういうとこ真面目じゃん」
言われてみれば皇は平気で約束を破れるような性格をしていない。
強そうな見た目をしているが、中身は結構繊細さんなのだ。
そりゃ秘密に出来なかったんだろうなと合点がいく。
「で、どうなの?キスして皇のこと意識しちゃった?」
「…な、なんでそんなこと聞くんだよ」
「だってあゆむがよそよそしいって皇から相談されたんだもん。ほーんとあゆむって顔と態度にすぐ出るよねぇ〜」
「そ、相談…というか、そんなに顔に出てる?」
「うん、嫌われたーって皇が落ち込むぐらい」
「ぅ…き、嫌うとかそんなんじゃないのに…」
「本人に言ってあげればいいじゃーん。…というか嫌じゃなかったんだ?」
春太の問いかけに、そういえばなんで断わらなかったのだろうと考える。
最初はいきなりだったこともあるけれど、2回目は完全に受け入れてたもんなオレ。
目に見えてしゅんとしている皇を拒否することが出来なかったから?興味本位でキスを体験したかったから?
それとも…無性に皇が可愛くて、なんでも許してあげたくなったから?
それってす、好きってこと?
「ふーん、へぇ…そんな顔しちゃうんだ…」
怒っているような低い声が聞こえた。
見ると春太が見たことのない能面のような顔でオレを見ていて。
えっと驚いていると、春太はすぐにパッと表情を変えてにっこり微笑んだ。
「妬けちゃうなぁ〜あゆむボクともちゅーしようねぇ」
蕩けるような甘えた声で言う春太に、しないなんてとてもじゃないが言えなかった。
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