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「ふぁ…」
「でっかい欠伸だなぁ、そろそろ目が覚めただろ?」
「うん、さすがに」
駅から学校までの道を並んで歩く。
歩道に沿って生えている木がうっすら紅く色づいていた。秋だなぁ。
「秋と言えば?」
「やきいも、かなぁ」
「うわ食べたくなるだろなんで言うんだよ」
「聞いたのあゆむだよね?」
「他には?」
「うーん、たい焼き?」
「うわっ、お前ふざけんなよ食べたくなるだろ」
「聞いたのあゆむだよね」
そんな中身のない会話を続けていると、後方からハツラツとした声に呼び止められた。
「あゆむ〜皇〜!おはよぉ〜!」
桜色の自転車に乗ってブンブンとこちらに手を振るのは春太だった。
春太はオレのもう一人の幼馴染だ。
俺達に追いつくと春太はひょいっと身軽にジャンプして自転車から降りた。
俺は春太のその降り方にいつもひゅんとなる。
いつか足が引っかかって転んでしまわないかとヒヤヒヤするのだ。
「ハルその降り方は心臓に悪い」
「え〜?大丈夫だよボク運動神経いいから」
いぇーいと気の抜けた声でこちらにVサインを見せる春太。
最近染めた桜ピンクの髪色も相まってすごくチャラい。
春太は小学5年の時に関西から引っ越してきた転校生だった。
女の子と見間違うぐらいの可愛らしい顔立ちに華奢な容姿も相まって、オレは最初春太のことを女の子だと思っていた。
何がきっかけかは忘れてしまったけれどすぐに仲良くなって、そのまま皇と三人でよく遊ぶようになった。
中身は成長と共にチャラ男に育ったが、可愛らしい容姿は成長した今も健在だ。
「ねぇねぇ今日さ放課後久しぶりにジョナろーよ。あゆむも皇も今日はバイトないでしょ?」
ジョナとは学校近くのファミレスのあだ名だ。
一年の頃からちょくちょく三人で過ごす時の溜まり場で、オレはそこのチョコパフェが大好きだ。
確かに最近はバイトだったり受験勉強だったりで三人で遊びに行く時間が減っていた。
今日も本当は真っ直ぐ帰って勉強する予定だったけれど…。
友達との時間を犠牲にするほどまだそこまで追い詰められていないし、たまには息抜きも必要だ。
「いいよ」
「やった!皇も大丈夫でしょ?」
「うん」
「やった〜!マジ久しぶりじゃね?楽しみ〜」
嬉しそうにニコニコする春太にオレもつられて嬉しくなる。
こうやって三人揃って集まるのは久しぶりなので放課後が楽しみになった。
「ハルちゃん先輩〜!」
「あ、おはよ〜今日も可愛いね!」
「皇くんおはよー!」
三人で歩いているとよく声をかけられる。
それは主に春太と皇に向けられたものだが。
そう、二人はモテるのだ。女子にも男子にも。
まあ確かに皇も春太も顔は整っているしスタイルもいいし、それぞれ違うタイプの美形なのでモテるのも当たり前だと思う。
高身長でクォーターでクール(おっとりしてるのがクールと思われてるらしい)な皇。
中性的で派手で目立つが人懐っこいコミュ力お化けの春太。
一年から三年までファンは多く、告白されることも多数。
付き合った人数も数知れず、毎日二人に向けられる黄色い声と熱い視線に俺は鼻高々だ。
そうだろう、カッコいいし可愛いだろうオレの幼馴染二人は。
決してオレ自身はモテたこともなければ誰からも告白されたこともないし付き合ったこともない凡人だが、そんなことはどうでもいい。
自慢の幼馴染が人気者なのは素直に嬉しいのだ。
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