29人が本棚に入れています
本棚に追加
「え〜!合コン?!」
放課後、約束通りジョナに来た。
お決まりの向かい合ったソファー席へ座り、いつも通りの注文を済ませ、オレは今日落合から合コンに誘われた話を春太にしてみた。
ずるい!ボクも行きたーい!と言うのかと思ったオレの予想とは違い、春太はショックを受けたみたいにすごく驚いて、それから眉を顰めた。
「…それ、まさかオッケーしてないよね?」
「え、いや、先に約束してたし断ったけど…」
「それって先に約束してなかったら行ってたってこと?」
なんだ?さっきまであんなにルンルンでピザを注文していたのに、一瞬で不機嫌になってしまった春太。
低いトーンで問いかけてくる春太にオレは首を傾げた。
何が気に障ったのだろうか?
「行かないと思う。そういうの苦手だし、楽しめないと思うから」
「ふーん」
正直に答える。
春太はブカブカのセーターの袖元で口元を隠し、視線を右上へ上げた。
これは春太の癖で、何かを考える時にする仕草だ。
「ハル」
「…まぁ、そうだよね〜!あゆむそういうノリ苦手そうだし。あ、また誘われて断りにくかったらボクのこと呼んでねー」
窘めるように声をかけた皇に、春太はすぐいつもの調子に戻った。
「う、うん」
え、なんだ今の。
なんだかオレの知らないところで、春太と皇の二人で通じ合っているような。
除け者にされているような。
そんなほんの少し感じた違和感に胸がザワザワした。
いやきっと気のせいだ。
雰囲気が悪そうになるのを皇が防いでくれただけなのだ。
「それよりさ聞いて〜」
さっきの空気も無かったように、すっかり元に戻った春太は今日あった面白話をし始めた。
些細な出来事なのに、聞いているとふふ、と吹き出してしまうのは春太の話力が凄いからだろう。
そこにたまに交じる皇の感想も、的を得ていて辛辣で、お腹を抱えるくらい笑った。
あっという間に先程感じた不安など忘れて、オレも話すのに夢中になった。
やっぱり楽しい。
三人でいるのが一番心地良い。
ずっとこのまま三人でいれたらいいな。
進路はそれぞれ違って、卒業したらどうしても離れ離れになるのが決まっている。
放課後に集まってこんな風に過ごすことも、もう二度と出来なくなるのだろう。
寂しいな、二人はどう思っているのだろう?
このままずっと友達でいて欲しい。
最初のコメントを投稿しよう!